
渋谷区ではかつて「渋谷茶」と呼ばれた銘茶の栽培が盛んに行われていたといいます。
京都の茶道薮内(やぶのうち)流と関係の深かった元佐賀藩主の鍋島家が、桑・茶栽培を奨励する政策のもとに明治9年、渋谷区の東側に「松濤園」という茶園をひらいてお茶栽培に注力し、「松濤」と名付けてこのお茶を売りに出していました。
この「松濤」というお茶が当時渋谷茶として愛され、皆様ご存知の通り、現在は著名人も多く住む高級住宅地の呼び名にもなっています。
鍋島家の名前は「鍋島松濤公園」という公園の名称のなかに残っています。
ちなみにこのとき鍋島家が植えたお茶の苗は佐賀のものではなく、日本三大銘茶の一つ、埼玉の狭山茶だったそうです。
約30年にわたって栄えた渋谷茶でしたが、1923年に東海道線が全面開通して安価な静岡茶や宇治茶が入ってくるようになると、高級だった渋谷茶は徐々に市場から追いやられ、やがてその歴史に幕を下ろすことになりました。
かつてお茶畑が広がっていたなんて、今の渋谷からは想像がつかないですよね。